相続手続きの円滑化に向けて

戸籍法の一部改正が成立、公布へ

2019年5月24日に戸籍法の一部を改正する法律が成立し、2019年5月31日に公布されました。

国民の利便性向上と行政の運営効率化を目的とした今回の改正では、どのようなことが可能になるのでしょうか。

 

戸籍法と戸籍事務の電子化

私たちの親族的身分関係を証明する「戸籍」、この戸籍の作成や手続き等について定めた法律が「戸籍法」となります。

平成6年の改正によりコンピュータを使用して戸籍事務を取り扱うこととなり、現在では全国1896市区町村のうち1893市区町村でこのコンピュータ・システムが導入されていますが、各市区町村のシステムがネットワーク化されていないため、私たちが戸籍を請求するためには本籍地の市区町村役場で手続きしなければなりません。

たとえば相続手続きで、自分と両親や叔父叔母等親族との身分関係を説明する場合、その親族の各本籍地へ戸籍を請求することになります。

本籍地と住所地は別の概念であるため、住所地から遠く離れた場所であることもしばしば。遠隔地であれば郵送で請求することになりますが、郵便の往復期間もあり1通請求するのに数週間を要することもあります。

相続手続きの際には、何人もの戸籍を請求しなければなりませんので、とても時間がかかってしまいます。

本籍地以外でも戸籍の取得が可能に

こうした課題を受け、今回の改正では法務省が一括する戸籍データの管理システムを活用することで、本籍地以外の市区町村役場での戸籍請求が可能になります。

また、電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)の発行も可能になる予定です。

このシステムの具体的な運用開始時期については、公布の日から5年と想定されています。今回の改正により、これまで煩雑で時間のかかっていた戸籍収集の手間が大幅に削減され、相続手続き全体の円滑化にも期待が持てそうです。